ひとつ ことのは/木立 悟
 



空と 空のかたちの窓と
空のかたちの音が重なり
幾つもひらくものの内の
悲しいものが言葉だった


小鳥が鴉のうたをついばみ
鴉が小鳥のうたをついばみ
小鳥は鴉に 鴉は小鳥に変わり飛び去り
残されたものが言葉だった


夜という名の空が歩き
暗くて見えず 立ちどまり
ずっとたたずみ さえずりつづけ
降りおりるものが言葉だった


青空になく冬空にある
遠い遠い叫びのほうから
背の高い雪がやって来て
鎖の声とすれちがう


たくさんのあなたがいなくなり
たくさんのわたしがひとりうたうとき
火の花のようにまわる輪の
散り咲く影が言葉だった














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