なにものかのとおったあと/10010
なにものかのとおったあと――
古色蒼然とした部屋に大小様々な地球儀がいくつか並べられていて、地球儀はそれぞれ貫通するようにくりぬかれている。まるでなにものかのとおったあとのように。物質は色を持つが、セピア色は物質がもはや存在せず、何かがそこに存在したことの痕跡を示すための顔料である。セピア色の地球儀はとぐろを巻く大蛇、はたまたウロボロスのように連なる。それは、くりぬかれたものたちの幕開けであるが、くりぬかれたものたちはその幕開けからもはや存在していない。あるいは、なにものかのとおったあとではなくこれからなにものかがとおるあとなのだと?
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