落ちてくるもの/猫のひたい撫でるたま子
 

私はかつて、か弱くよく泣く女性であった
そんな霧のベールに守られていた私の体の中に、
いつからか侵入してきたものがあった

それからの私といえば

人間でもなく
子供は生産しないセックスを営む
言葉を排出していくだけのものになった

死んでる心に冷たい水を浴びせる役目に就いた

そうすれば、人はあるべきところ整理されてゆく

浮遊するものを探して回る

人間からは特別愛されない

もう二度と女性としては

あなたが見た女性はもういない

あなたは最後の目撃者

もう存在しない山茶花に似た女に優しくしてくれた、唯一の人

誰からも愛されない吐瀉物は、いつからか空からふって沸いてくる

忘れてしまうことが人間のできる一番すばらしいこと

忘れたくないのはいつか在った愛の味が甘美だったため


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