落ちてくるもの/猫のひたい撫でるたま子
私はかつて、か弱くよく泣く女性であった
そんな霧のベールに守られていた私の体の中に、
いつからか侵入してきたものがあった
それからの私といえば
人間でもなく
子供は生産しないセックスを営む
言葉を排出していくだけのものになった
死んでる心に冷たい水を浴びせる役目に就いた
そうすれば、人はあるべきところ整理されてゆく
浮遊するものを探して回る
人間からは特別愛されない
もう二度と女性としては
あなたが見た女性はもういない
あなたは最後の目撃者
もう存在しない山茶花に似た女に優しくしてくれた、唯一の人
誰からも愛されない吐瀉物は、いつからか空からふって沸いてくる
忘れてしまうことが人間のできる一番すばらしいこと
忘れたくないのはいつか在った愛の味が甘美だったため
戻る 編 削 Point(1)