密室/暗闇れもん
すべすべした冷たい壁に体を這わせる
赤い唇がささやくようにふるえる
足元に布がまとわりついている
いらないとふと思い
次の瞬間にはその記憶さえ捨てた
窓が無い部屋の中で
白い壁が続く無機質な箱の中で
助けを呼ぶわけでもなく
壁に身を寄せた
この壁の何処かにわたしを見るカメラがあるのかしら
この壁の何処かに継ぎ目は本当にあるのかしら
空気穴はどこ
ここはどこ
生まれた時からの記憶さえ危うくなってくる
ここは白だけの何も無い世界
もしこの壁の向こうに誰かがいて
わたしを見ているのなら
尻尾を出すまで壊れたそぶりで欺いてあげる
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