透明の震え/紀茉莉
 
はじまりはじまり
めくるように幕は開け
そしてやってくる
壮絶に赤い赤いシーン

ねえ、きこえる?
無音に響く
私が奏でる
インストゥルメンタル
からだごと
空も
地も
漂うもの
すべて
包まれたセロファンの中
ゆらめく魂の、
上下する呼吸の、
膨張し、
向かう、
無数の音が、
きこえる?

たったひとつじゃないけど
唯一の
変わり行くけれども
普遍の
絶えることのない
私の
奏でる音が

物語ははじまり
いつか
おわりに辿りつく

ひとつ
ふたつ
重なり
響き
訪れる
違う色のシーンに続く
ただひとつの音色
波にのせて

わたしはずっと奏でつづける

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