祈れ/水在らあらあ
 
十字を 切ってみる
くちづけは しない  できない
テーブルの上 絞られて 冷めきった空白を湛えて 静かに
レモンが 香っている 

見あげる
天井は遠く

手の傷は 今は静かに
BETADINE 混じりの
涙を 
滲ませている


     こうやって離れてゆくんだね
     忘れられる わけがないね


右手を
おまえの頭に置く
力を込めると
俺の手から
血が流れて
流れて
さみしがって

おまえの
涙を呼んだ






?.

祈れ

傷ついて熱い右手と 無傷で冷めた左手を合わせて祈れ

真昼間 石畳に ひざまずいて
青空の青さに祈れ

見上げて 目を閉じて
すべての匂いを思い出して
その中で一番
魂をえぐる悲しみに

傷ついて熱い夜と 無傷で冷めた朝を込めて
傷ついて熱い銀河と 無傷で冷めた太陽を込めて
傷ついて熱いおまえと 無傷で冷めた純情を込めて

祈れ











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