押入れの安吾/リヅ
た
安吾、なんか話してくれへん? 自分のこととかさ
………
聞いてんの?
………
バカアホマヌケ
黙れ
なんもおもろい話できひんのやったら出てってよ
………
安吾のいる押入れのふすまはいつもほんの少しだけ開けられていた
ピッタリと閉められることもなければそれ以上開けられることもなかった
私たちはいつもその細いスキマを通して会話した
安吾は何も訊かんのね
女は質問してもろくな返事をしない
ほんならそんな女のいる部屋から出てけばえ
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