ひとつ みつめる/木立 悟
 



遅い流れにひたされる街
今日も鏡は隠されてゆく
たましいのないもののふるえを聴く
たましいではないものに包まれたたましい


蜻蛉や蜉蝣
碧い石の眼
空を分け
空に埋もれる


川の底に
つもる鏡
鏡だけを見て
沈む鏡


壁のぼる葉は
羽のかたち
すぎる鳥の
緑の影


曇が去り 風が去っても
まだらな光のまだらのなかを
水音はずっと水音のまま
踊るように歩みつづける


ふるえるもののあかしとしるし
流れと底のはざまのたましい
雪は葉の高さでうたへと変わり
鏡のない街を梳いてゆく













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