空に舞う/松本 卓也
 
昼飯を買って会社に戻る途上
頭上を素早く横切った影に
ふと目を奪われた先で

一羽の鷹が悠然と
青天を舞っていた

佐世保川はいつもより澄んでいて
きらり、と陽光を弾いている
鷹は、風光を纏い、雲を背負い

ビルの向こう側を巻いて
空に昇っていくよう

唐突に烏が三羽飛んできて
鷹に仕掛けてきた
小さく鳴く、けれど
意に介さずに、舞う

何事も無かったかのように
進むべき道がそこにあるように
一片の羽を落としながら

やがて烏は去り
鷹は、再び空を滑る
高く遠く、彼方に見える星へ
放たれるように、飛んで

足元に舞い降りる一片の羽
拾い上げ、陽射しに透かすと

地を這う生き様を哂うように
足掻く暮らしを讃えるように
遠くで響く鳴き声が春に響いた

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