そぞろ歩き/八布
向かい風を頬に受け 冬の終わりの匂いにむせながら
静かな午後を歩いていく
ポケットに手を入れて 青ざめた思い出を抱いて
たまにきょろきょろしたりして
靴を打ちつける仕草も様になってきて
いよいよ春がやってくる
葉っぱの隙間で太陽が光り あいつの視線も今日は気にならない
どこまでいこうか
どこまででもいこう
そんなやりとりの後で小さく背伸びとあくびをした
僕より立派な僕の影を引き連れた
ある日のそぞろ歩き
思い浮かべた言葉をツギハギして
歌をつくろう
春の歌を
季節の餌食になりながら 僕らは繰り返し服を脱ぎ
違う形で歩いていく
生まれて死ぬまでの
そぞろ歩き
戻る 編 削 Point(3)