そぞろ歩き/八布
 
向かい風を頬に受け 冬の終わりの匂いにむせながら
静かな午後を歩いていく 
ポケットに手を入れて 青ざめた思い出を抱いて
たまにきょろきょろしたりして

靴を打ちつける仕草も様になってきて
いよいよ春がやってくる
葉っぱの隙間で太陽が光り あいつの視線も今日は気にならない
どこまでいこうか
どこまででもいこう
そんなやりとりの後で小さく背伸びとあくびをした

僕より立派な僕の影を引き連れた
ある日のそぞろ歩き
思い浮かべた言葉をツギハギして
歌をつくろう
春の歌を

季節の餌食になりながら 僕らは繰り返し服を脱ぎ
違う形で歩いていく
生まれて死ぬまでの
そぞろ歩き




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