にせの春/高宮シンゴ
 
うららかな 鳩のような日
もう季節は移り変るという開放感で僕は
浮き上がる
僕は (手ぶらで)
散歩に出てみる
空は (裸足で)
僕の上にのしかかる

道をゆく
この道をゆく 受胎可能な少女たち
欄外の環の上で僕は彼女たちとすれ違う
ヘンリー・ミラーのような好色な眼で
僕は見てしまう
光はごく自然に
彼女たちの未成の魂から生まれ出る
その光線に含まれる毒と薬を
まともに浴びる僕 (何の防御もなく)
僕もゆく
この道をゆく
すべての可能は僕とは無関係に
本分の環の上を回るように思える
すれ違う
 僕
  少女たち

春であろうと なかろうと
僕はこ
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