凹光路/木立 悟
 


この先
いきどまりです


木陰の看板を
すぎてゆく雲


誰かの何かが持ち去られ
小さなものひとつ分だけ足りない世界の
午後のガラスの路を歩む


春は銀の子
火は雀の子
つづけ つづけ
打ち寄せつづけ
路は曲がった色にさざめく
たわみ ふくらみ
かがやいてゆく


小さな符が花にまぎれ
何かを失くした世界を流れる
にじむ光のひとつひとつが
木陰の看板をすぎてゆく


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