仕事の話/吉田ぐんじょう
 


さようなら
と言って社を出ると
わたしはこっそり指輪をはめます
君からもらった指輪です
それは真っ暗な駐車場で
凶器のように光るのです


かばんは帰宅した途端
ひどく重たくなります
じゃっとファスナーを開くと
こぼれだしてくるのは
無能でした
すっかり無能を取り出してしまうと
あとに残ったのは
四色ボールペンだけでした



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