仕事の話/吉田ぐんじょう
・
好きと嫌いが
ギアの上で揺れていました
わたしはちょっと迷いましたが
結局どちらとも決められないまま
右手で好きも嫌いも
すっかり覆い隠して
細心の注意を払い
前の白い車を追い越しました
上司から電話が架かってきています
わたしはそれを無視しました
携帯電話が静止するさまは
まるで心臓が止まるようです
誰が泣いているのかと思ったら
雨が降ってきたのでした
・
道行く人は幸せそうです
ぼろのスーツを着たわたしは
まるで乞食かさなぎのようです
右胸だけが不自然に膨らんでいるのは
大量の名刺が入っているた
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