水の男/maynard
 
俺の手には零れ落ちるものばかり 
めげずに何度もすくっているのだけれども 
ことごとく零れ落ちるのだ 
地球上の水を全てすくってやろうなんて考えちゃいない 
俺の手に収まる範囲で慎ましくすくっても 
零れ落ちて落下してゆく 
何度繰り返しただろう 
もうそろそろ諦めてもいいんじゃないか 
俺は良くがんばった 
もうすくわなくても良いんじゃないか 
例えすくえたとしても 
慰めや慈悲などあるわけは無いのだから 
それは無責任かも知れない 
「水は低きに流れ 人の心もまた低きに流れる」 
この流れを止める事など不可能なのだ 
だから零れ落ちる 
重力が重過ぎるのではない 
たとえ重力が無くなったとしても 
それはすくい上げる事などできやしない 
でももう一度水の中に手を突っ込む 
この事実を確認するように 
恐る恐る
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