駅・函館/たりぽん(大理 奔)
 
灯台の積層レンズから
ここにいる、と叫ぶ声は
遠くからは星
近くからは秒針
海霧に照らし出す
港という駅

造船所の大きなクレーンを
右手にみながら
故郷はいつも
思い出せない何かに似ている

  手のひらでも
  背中でもなく
  声でも
  まなざしでもない

夜の正体を
街灯りが銀河に隠すとき
北にしか向かわない列車が
旅人に行く先を尋ね

  春から逃げるように
  ここにいると叫ぶ声
  まっくろな真昼の海
  雪よ凍らせて
  散ってしまう
  あの樹を
  咲かせないで

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