モンスター/智鶴
 
その時何を考えていたかは
とうの昔に忘れてしまったが
其処から見ていた景色が
哀しい程美しかったことだけは覚えている

閉じかける目を
何度も何度も抉じ開けて
恐らく
君は何かを伝えたかったんだろう
哀れむような目で
僕を見ていた

万物に意味が有る訳ではないが
傷つけ合い
殺し合うことには意味が有ると
少なくとも信じることだけは

瞳の中にモンスターが見える
欲望と憎しみを喰って
哀しみを生み出すモンスター
僕の中の成長し過ぎたモンスターは
僕を喰い殺して
他の宿主を探している

世界に蔓延るモンスターが
巻き起こす争い
もう意味が有るなどと信じられない
絶壁から見える景色は
憎しみの火と嘆きの赤で
哀しい程美しかった
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