お祭り/はじめ
 
愛らしい
 君と手を繋いで出店をゆっくりと回る
 和太鼓を叩く規則的な音が山頂から鳴っている
 男達の酸っぱい汗がここまで飛んできそうだ
 ヨーヨーを伸縮させ僕の手首には赤と黒の金魚が袋の中で泳いでいる
 君は雲の塊のような巨大な綿飴を顔を埋めるように囓っている
 人で塗り潰されている道 みんな共有している快楽を持っているようだ

 土の階段を登って 広場に出ると時間を操作している音楽に合わせて踊る人々がいた
 みんな下の出店で買ったお面を付けている
 涼しい風が僕らの間を通り過ぎる
 夜空が近い
 お祭り用の小さな花火が打ち上がった
 空を見上げて君は微笑んでいた
 色取り取りの花火の光が君の顔を鮮やかに彩っていた
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