境界線/芙架シギ
 
確かあれは華の咲く頃
夢も醒めてしまうような青の中から
僕らは最期の空を網膜に焼き付ける暇すら なくして
空虚な 其処 に
放り出されたのでした

――虹は失せたのでせうか…

君はそう問うたが
僕のこの色素に欠けた瞳では
陽を見上げることが出来ぬ故
確かめることが出来ない
それが故に、唯一
僕は

――其処にありませう

君の胸を指し戯言を吐くことしか出来ぬのでした

其れでも君はわろうてくれた
僕は幸せであったのです

確かあれは華の咲く頃

君の髪を彩る
朱鷺色の華が咲いていた頃

僕らは全てを失いながらも
あの日
僕らは凡てを得ていたというのです

街が黄昏に染まるその時
僕らは夜の闇に背
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