太陽を盗んだ男/虹村 凌
 
られた
その眼つきは何だと言われて
蹴り飛ばされた
口の中がアスファルトの匂いで一杯になって
少し暖かかった じいちゃんの匂いに似てる
じいちゃんはいつも血だらけだった
ばあちゃんはそれを見て何時も笑ってた
じいちゃんは何時も白い自転車に乗ってた
さっき俺が貰ったのと同じ
真っ白い自転車に乗ってた
そうか
じいちゃんもそうだったのか

自転車に飛び乗って 地球の裏側まで走った
パトリオットミサイルが飛んできた
四十四口径が飛んできた
ニューナンブじゃ勝てなかった
でも
太陽を盗んだらこっちの勝ちだ

地球の裏側のみんなに太陽を貸してくれと言ったら
ふざけんなって言われた
石とウンコとハンバーガーが飛んできた
無性に腹立たしくなって聖書に弾丸を撃ち込んだら
太陽が勝手に落ちてきた
それを抱えて走って逃げた
白い自転車は置いてきた

ユウコの部屋を覗いたら ユウコの父親が見えた
入り難かったから手紙を貼り付けて窓の外に置いて逃げた

「太陽が見たい時は このボタンを押してください シン」

次の日 世界は核の炎に包まれた
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