思い出話/霜天
まるで隠れるような三月
全てを終わらせた昨日から
跳ねるように帰宅する君たち
その隣の景色が輪になっていく
循環する道程を真っ直ぐだと
いつまでも信じているものだから
中空に飛ぶ鳥の
数を数えたこともある
青空や花、足音、触れ合う呼吸、囁き声
いつかのそれらに、染み渡っている音
川原の石に耳を当てれば
今もさざめきは聞こえるだろうか
分かれ道
遠い十字路
別れあう声が聞こえる
あちらこちら
挨拶の隙間
誰もいない昼の街並み
君の脚だけが駆け抜けていく
語る景色は変われないまま
いつも真昼の空に溶けた
今日も区切りの鐘が聞こえる
そして今も君たちは門から街を、抜け出して
脚と声だけで駆けていく
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