死と僕/神樹
 
花はいつか咲く。雨はいつか止む。大衆はその言葉を信じた。
桜もいつか散る。君も僕もいつか死ぬ。現実はそう答えた。

いいか、死とは旅立つことじゃない。無くなる事だ。
僕は言う。目の前にいる無知な人間共に。
死とは思い出になることじゃない。消え去ることだ。
僕は言う。僕の前に列をなす人間共に。
誰も僕の言葉を聞いて、僕に拍手を送ろうとはしない。
この詩は死だから。
誰も僕の言葉を聞いて、笑いはしない。
君もすぐ無くなるから。

金を盗んで働く必要も無い男にも、心を盗まれて泣く必要の無い少女にも、死は平等に訪れる。
人は死ぬ瞬間だけ平等だ。
誰かがそう言った。
よっ、哲学者。僕は鼻で笑う。
死んだ後のことなんて、もう、どうでもいい。

止まない雨は無いと人々は言う。
散らない桜は無いと僕は言う。
現実は僕を指差し、理想は人々を指差した。
真実はもうすでに雨に濡れた君を指差した。

戻る   Point(2)