僕の隣にいる腐った君/はじめ
 
 腐乱した君が僕の横で死んでいる
部屋は密封されていて匂いがひどい
 冬なのに蠅が飛び交い 体中から蛆虫が湧き出ている
 暖房が効いているせいか
 床には睡眠導入剤の瓶が大量に散らばっていた
 一体どこでこんなに買ったのかと思った
 部屋は汚かった
 もう三日も飲まず食わずで不眠だ
 薄いカーテンから漏れる光が部屋を照らす
 ベッドに背をもたせかけている
 僕は君の左手と手を握った
 ぶらんぶらんしたり二の腕を震わせたりした
 けど君の表情に何の変化も無かった
 眠っているように死んでいる
 この「君」は本当の「君」じゃない
 僕は絶望のうちに死んでいくのかもしれない
「君」に会えないまま
 誤解されたまま
 嫌われたまま
 少し眠りたい
 転がっていた睡眠導入剤を数粒口に放り込む
 ベッドに頭を沈める
 腐乱した匂いが少しだけ気持ちの良い匂いになった
 時計は止まったまま
 日の光だけが僕の嗅覚を刺激した
 とろとろと微睡みに落ちていった
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