「チョウ」 (青年詩片)/ベンジャミン
(美しく生まれたかったと
思ったこともありました)
ある日
一羽のチョウが迷い込んできて
羽を持って生まれてきた生き物は
そんなふうに飛ぶのが
当然なのだというように
ゆらりと抱いた風をふくらませて
ほどけた花びらのように飛んでいました
あれはそう
たしか去年の今頃
あなたとよく似た
けれどあなたとは違う
あなたに出会ったことを覚えています
(美しく生まれ変わりたいと
願っていた頃のことです)
いつか見たあなたは
もう飛ぶこともできずに
その美しい羽だけを残して
もうあなたではなくなっていたから
それを悲しく思いました
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