春の迎え方/松本 卓也
 
当は恨み言だったはずなのに
まるで書き古した人生訓のように
心縛る鎖になっていく

吹く度に変わっていく風
降る度に溶けていく雪
巡る度に流れていく涙
忘れる度に強くなる心

何も捨てずに過ごしていったのなら
何からも捨てられずに生きていたのなら
今より強くなった心があったのかな
今より弱くなった心もあったのかな

黙っていても季節は巡り
立ち止まっても時は流れ
見つめていても君は離れ

また一つの冬が過ぎ
抱えていた想いに別れを告げる
一片の結晶が頬に張り付くけど
拭わなければ春はやって来ないのだ


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