夏の切符 〜海岸列車〜/Rin K
のガラス瓶
限りなく高い太陽のカケラを
地上にふりまきながら、君に追われて
吸い込まれていった
ゆるい下り坂の途中で
ねえ、これ桜の木でしょう
一日のうちで一番濃密な木かげに
君は小さく収まって
サンダルを脱いだ
君がいてくれたから、気がついた
切符の日付には、およそ不似合いな木は
君がいなくても、その場所で僕を
迎えてくれる 咲きかけのつぼみで
通り過ぎた列車の
なごりの風が、引き連れる
遠い警鐘
あのときは聴こえなかった
センチメンタリズム
帰りたかった場所は、透明な扉のむこう
切符をもてあそびながら、膝を
抱える僕に
よく似た人が、映っている
そこに、映っている
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