夏の切符 〜海岸列車〜/Rin K
 



通り過ぎた列車の
なごりの風が、引き連れる
潮のにおい
線路沿いにこの道をまっすぐ行けば
ほら、海が近づいてくる

そう言ってふたり、短い影を
踏み合いながら走った日
無人改札に
置いてこなかった切符は、今も
褪せることなく財布のポケットで眠っている
思い出というものを、どうしても
目に見えるカタチで残しておきたい僕は
傾いた改札箱に、潔さを放り込んできた



あの日、君はといえば
まるで、ありあまるほどの
花びらでも飛ばすように
指先でもてあそんでしわになった切符を
潮風に流した

カラコロと透き通る音は
誰かが忘れていったラムネのガ
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