「 ケタ。 」/PULL.
 
ひとりじゃおれ…。
 寂しいんです。 
 だから、
 一緒に死んでください。」

ケタが、
襲いかかってきた。
血に濡れたナイフが、
ひどくきれいに見えた。
あれは誰の血だったのか。

足が、
先に動いた。

靴底から伝わる嫌な感触に、
おれは安堵した。
砕けた顎を押さえ、
のたうち回るケタは、
おれの知っているケタだった。


あの夜、
ケタの顎を蹴り砕いたこと、
今でも後悔していない。
だけど…。
だけどどうして、
今もこんなに、
夜が苦しくなるのだろうか。












           了。


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