「 ケタ。 」/PULL.
あの夜、
ケタの顎を蹴り砕いたこと、
今でも後悔していない。
いつも間違いばかりしていたけど、
あれだけは後悔していない。
ああしなければ、
ケタはまたケイサツに捕まって、
今度はネンショじゃなくて、
ホントのムショに入れられて、
そこでもっと、
わるいものを覚えて帰ってくる。
きっとそうなる。
だから…。
だからおれ、
そうならないように、
ケタの顎を蹴り砕いて、
病院に入れた。
病院に見舞いに行った時、
ケタはあの夜とは別人みたいに、
澄んだ目をしてた。
退院したら車の整備工場で働くんだって、
それが小さ
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