棚織津女の一夜/なかがわひろか
 

この村は厄災から守られるのでしょう

しかし
あなたは本当に私たちを守ってくれるのですか
仮に厄災で誰ぞが死んでも
恨まれるのは私だけです

私の力が足りなかったと
私は縛り罵られ
生涯蔑まれるだけなのです

そして来年になればあなたはまた新しい女を抱きます

あなたは本当に神様なのでしょうか
それとも好色の悪魔でしょうか

迷信が作り出す幻影に
私も村の者たちも
ただ惑わされているだけなのかもしれません

いいえ、本当はなんでもよろしいのです
惑うことで
不安が消えて行くのです
ただそれだけのために
私は自分をあなたに
捧げたのです

溢れた星が降る夜に
私は一人
そう思うのです

(「棚織津女の一夜」)

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