棚織津女の一夜/なかがわひろか
この村は厄災から守られるのでしょう
しかし
あなたは本当に私たちを守ってくれるのですか
仮に厄災で誰ぞが死んでも
恨まれるのは私だけです
私の力が足りなかったと
私は縛り罵られ
生涯蔑まれるだけなのです
そして来年になればあなたはまた新しい女を抱きます
あなたは本当に神様なのでしょうか
それとも好色の悪魔でしょうか
迷信が作り出す幻影に
私も村の者たちも
ただ惑わされているだけなのかもしれません
いいえ、本当はなんでもよろしいのです
惑うことで
不安が消えて行くのです
ただそれだけのために
私は自分をあなたに
捧げたのです
溢れた星が降る夜に
私は一人
そう思うのです
(「棚織津女の一夜」)
[グループ]
戻る 編 削 Point(9)