錆付いた万華鏡/vallette
 
昨日見た金色は、やはり昨日の空に消えてった

僕らはまだここでもがいている
手を伸ばした先に何もないと知っていても
背伸びをすることは止めなかった

いつも五月蝿い犬の鳴き声は
冬の雨に打たれて、やむなく
雨雲色したアスファルトに溶けていった

無くした物は遠ざかり
砂時計は流れるのを止める

倒されたチェスの駒が天井を睨み付けている
その気持ちを今はわかる

現実は錆付いた万華鏡だ

幾ら回しても見える模様が変わることはない
なぜなら模様は一つしかなく、それ以外は言い訳なのだから

現実は錆付いた万華鏡だ

光に翳さないとどんな模様なのかさえ、判らない
それなのにその光が、たとえ偽者でも誰も困らない

現実は錆付いた万華鏡だ

それはきっと、綺麗じゃない
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