赤 (さん)/容子
に
スカートのプリーツは帰路に迷い
綻びかける水門には西の空が映ります
両足のあいだを流れるせせらぎに
金魚はあの人の幻影を餌に赤みを増して
横目でわたしを笑うと
今日も水門に触れることなく
西の空へ戻ってゆきます
まぶたの向こう側で
描いたあの人の姿が
消えてしまう
そのときまでの束の間の戯れです
ほんの十分程度の秘めごとです
そうして
午後五時十分
わたしは両足をもどします
制服のプリーツスカートを
両手で伸ばし
わたしは普段どおり
何事も
なかったかのような
澄まし顔で
帰り道に戻るのです
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