あの頃と違うわたし/たのうち
今日、片付けの途中に
すっかりくもったシルバーのバンクルを見つけました。
それは、
かつて共に恋に落ちた男性と
ペアで買ったものです。
あの頃は、
物で心を縛れると思っていました。
二人で同じものをつけることが
「愛し合っている」という証拠になると
本気で信じていました。
わたしは馬鹿でした。
今ではもう、
そんなことはありえない
と確信していますので、
私は落ち付いた気持ちになれました。
すっかりくもったシルバーのバンクルを
クリーナーで磨き上げたとき、
その新品のような輝きにとても安心しました。
物は昔を取り戻せるけど、
私たちはもう、あの頃には戻れない
という全く当然の事実は
私を励ましてくれるのです。
「あなたがいなくても私は頑張っているよ」
と彼に教えてあげたくなりました。
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