ポートレイト/umineko
 
 哀しい事件の起こるたび
 想像せずにいられない
 あの崩れ落ちる父の母の
 それが
 自分だったらと

 私はまだ失ったことがないから
 あるべきものを
 まだ失ったことがないから

 もちろんいくつかの
 出会いは私の手を離れ
 しかしそれは一方で
 予兆していたことだから

 どんな熱い涙もキスも
 やがて消えゆくものだったから

 ――私はまだ失ったことがない
   君を
   まだ未熟な遺伝子を
   

 哀しい事件の起こるたび
 想像せずにいられない
 その偶然が自分へと降る
 突然の午後の電話を

 その夜
 フラッシュの放
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