ハナミズキ通りの夜/A道化
 


紅色に蕾んだハナミズキの予感の
爆ぜるように的中した枝の 昼間の春の
染み込んだ雲は少しも耐えたりしないので
自在に 夜は春を濃くして暮れ


紅を翳らせてゆく 通りの並木の直立の
影はどれなのか
紅を翳らせてゆく 通りの並木の直立の
姿はどれなのか


ハナミズキは今 どうしているのか
わからなくなりつつある直立の並木に
ひとつだった手の 痛々しく裂けたような
林を 見てしまいました


葬列に似たその林へ しなだれ紛れたらば
丁度この身一人分の翳り加わった 夜の春は
いよいよ濃くなり
ハナミズキやこの身は行方をくらまし


ほら 予感通り もう何もわからないのです
ハナミズキやこの身は行方をくらまし
ほら 矢張り 予感通り 
ハナミズキ通りには もう何もないのです



2004.4.19.
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