死神の静寂/はじめ
 
 静寂が怖い
真剣に耳を澄ましてみるとキーンという耳鳴りだけが聞こえてくる
 不気味なほどの静寂さ
 死神が造り出しているに違いない
 鎌を研いで僕を手招きしているのかもしれない
 さぁもうお前は死ぬ時だと
 私に首を刈られるのだと
 そう思わせてならない
 妄想に殺されかけた僕は
 今でも寝たきりだ
 古い携帯
 すぐに充電が流れてしまう
 君と僕を繋ぐ唯一のもの
 しかし君はこの世界にはもう存在しない
 この世界には僕と死神しかいないのか
 死神に愛さえ感じる
 こうなった今では
 もう行かなきゃいけないみたいだ
 布団から起き上がり 静寂さが増す方向へと歩いていく
 どんどん近づくにつれて鼓膜が勝手にビリビリと鳴る
 空気の存在の音が聞こえてくる
 しかしそれも消えて空気すら無くなってしまった
 僕は宇宙の果てより彼方で死神に出逢った
 僕のイメージしていた通りの姿だった
 ただ一つだけ違うところがあった
 顔は君だった 僕は魂を刈られてもいいと思った
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