大地が眠る時刻まで  /水無瀬 咲耶
 
微笑みや涙を分かちあった人も季節も
今は移ろいゆき 途方に暮れ一人佇む
そんなとき海馬を優しく揺り起こされ
私は 翼ある者に呼び醒まされるだろう
人生の黄昏を ごくゆっくりと咀嚼しながら

  *  *  *

その来たるべき日は
きっと透きとおる秋に違いない
恒久なる青い空 鮮やかな黄橙の葉っぱたち
生命のろうそくは 本来の色に灯り
その揺らぎは 清らかで ただ美しくて・・・
 陽だまりのなか 私は静かに
 うたた寝でも しているのだろう
 甘えん坊の息子は何十年後も きゅっと
 手を握り返すが 眼差しは穏やかだろう
 下のおてんば娘も やはりあどけなく
 私
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