菩薩/ならぢゅん(矮猫亭)
ある老姉妹が奈良の長谷観音をお詣りしたときのことだ。参拝を終え京に向かう道すがら宇治に立ち寄り名物の鰻蒸しを食したところ、美味しさのあまり妹はつい度を過ごし腹痛を催した。さてそれからが大変。あちらの寺にご不浄を訪ね、こちらの社に厠を借り、京の町を無様にかけまわることになった。
――もう折角の旅行がだいなし。そう言いながらも妹はなんだか楽しそうだった。
――ねえさんはしっかりしてるから、どこへ行ってもすぐトイレを探してくれるし、ほら知らないところだから一人で行くの怖いじゃない、暗いし。ねえさんは一緒に行って待っててくれたのよ。
それは旅行好きの二人が一緒に出かけた最後の旅でのこと。二ヵ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)