太陽が死んだ夜/八月のさかな
じっこをぼくにわたして
空に思いきり投げてくれないか
きみたちが永遠に夜にとじこめられることのないように
ぼくが朝をもういちど連れてきてあげる
にせものの朝だけど
太陽はもうのぼらないけど
きみたちが永遠に眠っていなくてすむように
少年は世界中をはしりまわって
おおきな画用紙をてにいれた
力強く太陽を描き はじっこを星に手渡して
おもいきりかれを空に投げ上げる
そして世界に朝がきた
人々はあたりまえのようにベッドから起き上がり
学校へいき 仕事をして 暗くなればまた家路を急ぐ
毎晩画用紙をたたむ星のことなど何も知らずに
少年はつくりものの朝をみあげて
太陽を永遠にうしなったそらと
朝をむかえるひとびとを見比べる
画用紙をひろげる星がときどき思い出して泣くたび
涙の雨が少年の頬を濡らす
今宵も夜は暮れる
戻る 編 削 Point(1)