太陽が死んだ夜/八月のさかな
 
じっこをぼくにわたして
空に思いきり投げてくれないか
きみたちが永遠に夜にとじこめられることのないように
ぼくが朝をもういちど連れてきてあげる
にせものの朝だけど
太陽はもうのぼらないけど
きみたちが永遠に眠っていなくてすむように

少年は世界中をはしりまわって
おおきな画用紙をてにいれた
力強く太陽を描き はじっこを星に手渡して
おもいきりかれを空に投げ上げる


そして世界に朝がきた


人々はあたりまえのようにベッドから起き上がり
学校へいき 仕事をして 暗くなればまた家路を急ぐ
毎晩画用紙をたたむ星のことなど何も知らずに

少年はつくりものの朝をみあげて
太陽を永遠にうしなったそらと
朝をむかえるひとびとを見比べる
画用紙をひろげる星がときどき思い出して泣くたび
涙の雨が少年の頬を濡らす


今宵も夜は暮れる



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