「 遺影の顔 」 /服部 剛
苺をつまんで口に入れると
何故かこころに浮かぶ
亡くなった友の妹の笑顔
部屋に日が射す
カーテンの隙間の向こうから
近づいてくる、春の足音。
(むすうのつぼみをつけた
(さくらなみきのさかみちを
(おぼろげないもうとのせなか
(かすみのむこうへ
(おりてゆく
*
桜の咲く頃は
友の妹の、三回目の命日。
秒針の音が、聞こえる。
あとかたなく食べ終えた
ケーキの皿を、床に置く
(となりのへやのぶつだんにおかれた
(いちまいのしゃしん
瞳を閉じ 闇に浮かぶ 笑顔
そっと
両手を合わせる
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