佳子 1997冬/ダーザイン
う側へ連れてかれちゃう、淋しいよ、淋しいよ」と泣き喚き、「あんたはぜんぜん私を見ていてくれない」と僕を責め、終いには車のキーや靴を隠すなどして僕の出社を妨げるようになった。
全ては僕のせいだった。ピラミッドを逆さに立てようと試みたかのような僕らの生活、はたしてそれが生活と呼びうるようなものであっただろうか。
或る時僕は探偵だった。最初から存在したことのない何者かを追跡するのが専門だった。また或る時僕は夜警だった。4頭の巨大な象の背中の上に支えられた円盤状の世界の果てで、決して届くことのない何者かからの合図を待つのが勤めだった。全ては虚無が、僕の中の虚無が原因なのだ。
神様との電話が始ま
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