佳子 1997冬/ダーザイン
「もしもし、もしもし、神様ですか?」
祖父から譲り受けたアンティークの電話機で、佳子は今夜も何者かと会話している。その電話機は飾り物でコード゙は何処にも挿してない。まあ、神様の声を聞くのに電話線を介さねばならない理由というのも思い浮かばないが、明らかに佳子は崩壊しつつあった。佳子には僕の背中にぽっかりと開いた虚無が見えるそうで、毎日神様にその穴を埋めてくれるようにとお願いしてくれているのだった。
始めは些細なことだった。対人緊張の度が増し、雑踏の中に出るのを怖がり部屋から出ることが出来なくなった。毎日日没時になると窓辺から恐怖に慄いた目で夕日を眺め、「つれてかないで、つれてかなで!向こう側
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