微温湯日和/霜天
 
指先はあたたかい
たぶん、その、ほどけていく瞬間まで
写真の空は記憶よりも鮮やかで
古い団地の隙間から
見上げるのはたくさんの
呼吸のない、窓

手のひらに
折りたたんだ空
に、記載されたのは
まだ青い3月
境目の、春
手をかざし耳を空、へ
通信は良好
聞きたいことばかりが届いてくる
そんなわけにはいかないのだけれども

  
  いつだって耳を塞げば簡単に流れていくはず
  で、そんな風には吹かれてみたくて。春の芝
  生に寝転べば、ああそうだったね、何て忘れ
  てしまう。教訓、後悔、そんなことばかりが
  身につかなくて。結局空に近づこうとした。
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