俳句の非ジョーシキ具体例5/佐々宝砂
 
赤く青く黄いろく黒く戦死せり  (渡辺白泉)

なんだかだんだん非ジョーシキでなくなってきた「俳句の非ジョーシキ具体例」、今度は時事ネタである。それも茶化すわけにはいかないたぐいの時事ネタである。どうやって非ジョーシキに結びつけるつもりなんだよう、私。

白泉の戦争句には「戦争が廊下の奥に立つてゐた」というのがあって、冒頭にあげた「赤く青く」より有名かもしれない。反戦的な文章の中に引用されることも多い句だ。廊下の奥に「戦争」を立たせてしまう感性が非ジョーシキだとは思わない。廊下の奥には確かに「戦争」が立っていたのだと思う、そして私にもそうした意味での「戦争」を実感する感性は宿っていると思う
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