灯/紅柳みつば
 
まるで
 
この世の
全てのものが
寝静まったかのような
 
そんな静寂に
包まれたとある一角
 
 
溝の中で自慢の目を
光らせる野良猫さえも
その混沌とした
闇に溶け込み
 
遠くで一声
か細く鳴く
 
 
ただ ただ
 
空を見上げれば
ぽっかりと浮かぶ
月があり
 
その鋭さは
孤独におびえた胸を
ちくりと刺す
 
 
今なら言える
誰にも告げることのない
心のうちを
 
 
窓から入る
わずかな光は
確かに私を指して
 
さあ、
と言わんばかりに
スポットライトを当てる
 
 
いったい何を
恐れて
[次のページ]
戻る   Point(3)