飴玉のある風景(サボテン)/野火 後里
 
長年育てていたサボテンがとうとう花を咲かせた。
てっぺんにひとつだけ、
うっとりするような明るいピンク。
針に刺さらないように、花びらだけをゆっくりつまむ。
生命のすべらかな感触が胸を暖かくさせた。

町はさっきから飴玉に降りこまれている。
屋根にアスファルトにとぶつかっては
バウンドして散らばる。
丸い飴玉。
サボテンのそれと同じピンク色をしていた。
一足早く夕暮れがきたような、
甘い黄昏色が遠くの通りを染めている。

サバが足元にやってきて私にカラダを摺り寄せた。
彼はそのまま窓のほうに近づいてニャアと鳴く。

「今は出ちゃだめよ。」

かがみこんで喉を柔
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