右手の甲にそら豆/カンチェルスキス
もうこうなりゃポカスカ日和だ
立っていると
足がくらげになってしまうほど
あったかかった
午後三時の図書館の屋上は
どの午後より
死んじゃってる、と
おれはベンチから立ち上がると
剪定された植木どもの向こうから
警備員のおっさんが現れる
おれからはだいぶ遠かった
おーい、あんた、と言い終わる頃には
おれのそばに立ち
あんた、風呂上がりに牛乳飲むの似合いそうだね、と
警備員のおっさんは顔を皺にして笑った
いや、おれは彼女からのメールの返信を待ってるだけだよ、
牛乳なんて飲んでないよ
瓶、だね、あんたは、瓶の牛
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