待ち合わせ/狩心
 
風の吹かない店内で プロペラが回る
喫茶店の隅っこ 私を優しく包む 木目の世界
雨漏りの音がする夕暮れ 待ち人来ず
軋む床の下からは ガタンゴトン
地下鉄の音がする
洗い物を洗う
皿を重ね 時間を重ね
時たま私に目をやる店員の顔はフクロウ
鋭い眼差しで心の闇を見抜く
観葉植物たちも全て分かったような顔をしている
私は窓に手を掛ける
堅い空はピクリとも動かず
滲む想いだけが 珈琲の渦に沈んでいく
割れたコップの音が店内に響き
店員が駆け寄り 私は息を引き取る
遠い日のお菓子の家
二人で隠れんぼしたね
会いたかった
僕は君に
もう一度だけ会いたかった

店を出て 私は帽子を被り 自分の存在を消した

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