桜、わすれていく/たりぽん(大理 奔)
色の名前を忘れていく
最初に忘れたのは
花の色を真昼の
それにする太陽
そして、ものまねの月
雨の色を忘れていく
濡れるものとそうでないもの
雲の内側では透明の
感傷にも似た
匂いだけは忘れないのに
雪の色に似ている
降り積もる時の
出会いの色
とけていくときの
あきらめのような色
春の温度をかたどった
舞い散るものの
旅立ちの色
路地裏に吹き寄せるときの
別れの色
まぶしい闇に
夕日を失ったこの街角で
ああ、もうすでに
色の名前を忘れていく
君の髪で揺れていた
野で摘む花の
そんな
ちいさな名前を
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