海辺の夜/
三条麗菜
も
ささやき交わす声も
もう何もいらないのです
夜と静寂とが同じ言葉となり
ただぬくもりだけを感じ合う
それだけの存在となりましょう
ぬくもりを生み出す鼓動だけが残り
それは同時に時を刻み続け
わたしたちは
この世で最もうつくしい
装置となるのです
心あるものも
心なきものも
手を出すことができない
一つの装置となるのです
人魚の去る水しぶきが
わたしたちが
最後に聞く音です
月はそこにとどまり
夜明けはもう
二度と来ません
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